POINT.1【ランチェスター戦略の二大法則】
ランチェスター戦略には重要な2つの法則が存在します。それが『一次法則(局地戦の法則)』と『二次法則(大規模戦の法則)』と呼ばれるものです。それぞれ順番に解説していきます。
『一次法則(局地戦の法則)』は
Aa-At=E(Ba-Bt)という公式で表されます。
Aaは、Aチームの最初の戦闘員の数。
Baは、Bチームの最初の戦闘員の数です。
Atは、ある一定時間が経過した後に残っているAの戦闘員数。
Btは、ある一定時間が経過した後に残っているBの戦闘員数。
つまり、AtかBtのどちらかが0になれば、戦闘員が0人ということで『全滅』です。
Eは、武器性能。つまり戦闘員に付随する付加価値で
Bチームの武器性能 ÷ Aチームの武器性能
で算出します。
それぞれのチームの戦闘力は
武器性能 × 戦闘員数
で計れます。
仮説で計算してみましょう。
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≪第1問≫
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・Aチームが500人、Bチームが300人
・武器性能は両チーム同じ1
・Bチームが全滅したあと、Aチームの残り人数は?
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求めるのはAチームの残数なので<At=X>とします。
最終的にBが全滅ということは<Bt=0>。
これを公式にあてはめてみます。
500-X=1(300-0)
↓
X=500-300
となり、残り200人と算出できます。
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≪第2問≫
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・では、この戦いを引き分けに持ち込むには
・Bチームの武器性能を何%アップさせればよいだろう?
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求めるのはBチームの武器性能(E)をXとします。
500-0=【X】(300-0)
↓
X=1.66666666…
で表されます。
つまり、兵力300のBチームと、兵力500のAチームが引き分けるには、武器性能を1.7倍にアップさせればいいというのが導かれます。
これをビジネスに置き換えると、兵力というのは自分の知識やスキルです。既に稼いでいる強者市場に挑んでいくには、自分の武器性能をアップさせる必要があります。
既存のマーケティングノウハウをいくら勉強してもなかなか利益が出ないのは、それが先人強者のスキルだから。つまり E=1 の状態な訳ですから、兵力が少ない後発組が同じスキルを学んでも勝てる訳がないのです。まずは、自分の付加価値をアップさせることからはじめ、それと同時に相手の上を目指していかなくてはならないわけです。
…そうは言っても、簡単に自分の付加価値をアップさせる事は出来ません。先人の上をゆく知識やスキルを身に着けるには時間がかかりすぎます。そこで活用されるのが、次の「二次法則」です。
『二次法則(大規模戦の法則)』
近代戦争では使用する武器の性能が著しく進歩しました。最先端の武器を使えば、1人の戦闘員が複数の敵を容易に攻撃する事が可能になったのです。そのため、単純に戦闘員の数で表すのではなく、その二乗で計算するようになったのが、この二次法則です。
Aa×Aa-At×At=E(Ba×Ba-Bt×Bt)
なぜ二乗にする必要があるのかは、置いておいて…
前回の例題を覚えていますか?
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≪第1問≫
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・Aチームが500人、Bチームが300人
・武器性能は両チーム同じ1
・Bチームが全滅したあと、Aチームの残り人数は?
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Bが全滅ということは、<Bt=0>。
今回求める「Aチームの残数(At)」をXとします。
今回はこの例を、二次法則の式にあてはめてみます。
500×500-X×X=1(300×300-0×0) となり
↓
X=√(500×500-300×300)ですので
↓
X=400
つまり、先ほどの問題の時は200人が生き残ったAチームは、近代戦争になると400人もの兵士が残るというわけですね。
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≪第2問≫
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・では、この戦いを引き分けに持ち込むには
・Bチームの武器性能を何%アップさせればよいだろう?
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今回求める、「Bチームの武器性能(E)」をXとして、
二次法則の式にあてはめてみます。
500×500-0×0=【X】(300×300-0×0) となり
↓
【X】=2.7777777777… です。
つまり、およそ3倍の性能アップが必要ということになります。
ライバルに勝利するには2通りの方法があります。兵力(基礎知識・スキル)をアップさせるか、付加価値(特典・サービス・オリジナリティー)をアップさせる方法です。
特典やサービスなどの付加価値が同じ「1」の場合は兵力をどれだけアップすれば良いか?
「局地戦」では、√8=2.8=約3倍。
「大規模線」では、√3=1.7=約2倍です。
第二次世界大戦のアメリカは、この数値を最大限に生かして勝利しました。空中戦で、日本の戦闘機は1機に対してアメリカ軍は3機編隊で交戦しました。地上戦で相手の3倍の兵力が確保できないときは、他の地域の兵を移動させてでも、必ず3倍の兵力を確保するように計画していたそうです。
この公式を頭においておけば、必ずビジネスという大きな戦場で勝利を収めることが出来る…というものではありません。しかし、頭の片隅にでも置いておいてください。新しい市場(大規模線)に攻め込むには、ライバルの2倍以上の戦略が必要です。ライバルの多い既存市場(局地戦)で新しく勝負する場合は、3倍もの戦略が必要です。
そして、有効な戦略や戦術が構築できない場合はライバルをよく分析し、それよりも魅力的な特典やサービス(付加価値)を用意することで一気に形勢逆転することも可能になります。既存ライバルと同じような商品や同じような戦略(兵力差=0)で、これといった付加価値(特典やサービス)も無い(E=0)のに、勝負を挑んで勝てるわけがりません。
いかなる市場でも、後発組がなかなか勝てないのはこの公式を意識してる人が少ないから。闇雲に竹やりを持って戦車に挑んでも、負けるべくして負ける戦という訳ですね。